2024年4月24日に「人口戦略会議」より公表された、
「令和6年・地方自治体「持続可能性」分析レポート ―新たな地域別将来推計人口から分かる自治体の実情と課題」
2014年に「消滅可能性都市」リストが公表されてから10年。
分析手法を拡充し、新たな視点で分析が行われました。
丹波篠山市は、10年前、消滅可能性都市のリストに掲載されており
私自身も実際、その結果に衝撃を受け、故郷である丹波篠山市に戻って10年間、地域活動を行ってきました。
しかし、なんと今回、消滅可能性自治体を脱却したとのことなので
その理由を解析しながら、丹波篠山市の今後について考えてみたいと思います。
若年女性人口の推移に着目した統計
そもそも、この消滅可能性自治体の分析って何を基準にしているの?という方のために簡単に解説します。
この分析は、20〜39歳までの「若年女性人口」の推移をもとに行われています。
若年女性人口が多いと子どもが増えるので、人口の自然増が見込めます。
この、「若年女性人口」が2050年までにどの程度減っているのか、という割合を「人口減少率」とし
それが50%以上減ってしまう自治体を「消滅可能性自治体」としています。
丹波篠山市は今回、「若年女性人口」の減少率が「47.6%」となり
2014年の「58.7%」から大きく改善されたことで、消滅可能性を脱却したことになります。
「封鎖人口」という着眼点が追加
「若年女性人口」の増減の要員は、
転入転出などの移住に伴う「社会的な増減」と
出生死亡に伴う「自然的な増減」があります。
2014年の統計ではそれらをまとめて「若年女性人口」の増減の推移を分析していましたが
今回の統計では「もし、自然的な増減だけでみたとき」の人口を「封鎖人口」として
封鎖人口の推移についても分析されました。
全体的な増減と、封鎖人口の増減を分析することによって
「人口の流出を抑えるような対策」(社会減対策)をするべきなのか、
それとも、「出生率を増やすような対策」(自然減対策)をするべきなのかを考えることができます。
丹波篠山市はどちらの対策も必要という結果に
丹波篠山市の分析結果は以下の通り。謎の記号もあるのでざっくり説明します。
項目名 | 結果 | 説明 |
---|---|---|
9分類 | D-③ | 自然減対策が必要 社会減対策が必要 |
前回比較(消滅可能性) | α | 前回消滅可能性自治体で、今回脱却した自治体 |
前回比較(増減率の分類) | △① | 若年女性人口減少率が10%ポイント以上改善 |
前回比較(増減率) | △11.1 | 前回より11.1%増加 |
丹波篠山市は「移動想定」(全体的な視点で考えたときの若年女性人口の増減)では47.6%の減少率
「封鎖人口」では26.2%の減少率
という結果でした。
どちらも20%〜50%の範囲に入っているため、
「社会減対策」「自然減対策」のどちらも必要、という結果が出ています。
しかし、数字だけを見ると、封鎖人口の方が減少率が低いですよね。
封鎖人口で見たときの減少率が低いということは
出生率が高いということになります。
なので、私の視点からみると丹波篠山市はどちらかというと
「社会減対策」の方に重点を置いて取り組むべきなのではないかと考えています。
丹波篠山市は若年女性が住みやすい地域である
以前、私が独自に分析した、全国の市792市と比較した丹波篠山市の「良いところ」「悪いところ」で
丹波篠山市の良いところとして「働き者が多い」「教育熱心」であることを挙げました。
内容の詳細は以前の記事をご参考ください。
丹波篠山市の「良いところ」「悪いところ」をデータ分析してみた
丹波篠山市は「働き者が多い」という結果の中で、
特に女性の働き者が多いことがわかりました。
また、「教育熱心」という結果の中では、
学校の数や教員の数が多く、教育費に充てる予算も多いことから
子どもを豊かに育てる環境が整っていることがわかりました。
丹波篠山市の政策のおかげで、
現在、丹波篠山市は若年女性が住みやすい地域であることがわかります。
とはいえ、不満の声も
「こども園に入れてもらえない」
「出産に対しての補助が少ない」
「手続きの書類が多すぎてすごく手間がかかる」
などなど、子育て世代の方からの不満の声もよく聞きます。
他市での子育て対策の大盤振る舞いなニュースなどを目にすると
どうしてもそこと比較してしまって、「丹波篠山市はまだまだだ」と感じてしまうだろうし
全体的に見れば◎でも、市民一人ひとりに着目した場合の個人的な不満もたくさんあるのだろうなと思います。
データ統計的に見ると、丹波篠山市は良い方向に向かっているといえますので
まずはそういった市の取り組みを評価しながら、さらにより良い方向へ改善していくことが望まれています。
市民の自己肯定感を高める
ありのままの自分を肯定する感覚のことを「自己肯定感」と言いますが
この感覚を自分の住んでいる地域に対しても感じてもらうことって大事だよなぁと感じます。
完璧主義な考え方や他者との比較によって「自己肯定感」は低くなります。
地域に対しても同じことが言えるのではないでしょうか。
まずは丹波篠山市が今回公表された「消滅可能性自治体」において
消滅可能性を脱却したことを評価し
若年女性が住みやすい環境が整っていることを認識することで
丹波篠山市に対する「自己肯定感」が高まっていくことを期待しています。
少子化の危機が解消されたわけではない
今回の結果で改善はみられたものの、少子高齢化に伴う危機が解消されたわけではないということを留意しておかなければなりません。
今後も、担い手不足や医療介護の不足といった少子高齢化に伴う問題は間違いなく起こってきます。
市民の自己肯定感が高まることで、「この町をもっと良くしたい」という前向きな市民が増え
また10年後に分析と公表がされるかもしれない「消滅可能性自治体」において
「自立持続可能な地域」になることを目指せたらいいなと思っています。